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2011-06-24

24時間換気システムについて(第1種熱交換型と第3排気型)

前回の日記の次に書きたいことはこれ、と決めたまでは良かったのですが、考え始めたらなかなかまとまらず、いつの間にか十日も経ってしまいました。これ以上引き伸ばしても仕方がないと思い、とりあえず現在考えているところを書いてみることにしました。ちょっと難しい話になりますがご了承ください。

10年ほど前から義務化された住宅の24時間連続換気。その法制化以前から高断熱高気密住宅にかかわってきた者に言わせていただくと、これで世間の住宅の室内環境が向上したのかといえば、まだまだと言わざるを得ないと思っています。24時間換気と一言で言っても、その内容や質は千差万別、ピンからキリまで状態であり、しかも本当に24時間連続運転しているような家はまだまだ一握りだと思います。入り切りのスイッチがあって、簡単に停止できるような状態なものが圧倒的に多いと思われるからです。また、とある建築士の集まりで『無駄な法律、意味がない』という意見が堂々と語られ、その場の皆が同意するような場面にも遭遇しているからです。高断熱高気密住宅にするから必要なんだと考えている専門家も少なくありません。そういう専門家ですら、アルミサッシを使い、壁には断熱材を充填させた家づくりを行っているのですが、実はそれが矛盾しているのです。

なにも高断熱高気密を意識した作りにしなかったとしても、今どきの一般的な住宅は、常時換気が必要なレベルの気密性は、あるのです。気密性があるといっても、冷暖房の熱を逃がしてしまうというレベルでは低気密なのですが、わずかな隙間風では必要な換気を得ることが不可能、というレベルでは十分に気密性があるわけです。伝統的な古い住宅のように、しっかり風が入ってしまい隙間もたっぷりある、しかも天井裏から囲炉裏の煙を抜くような穴が開いているような家ならば、機械的な換気システムが不要というのもまだ理解はできるのですが・・・。

話がそれましたが、本題の第1種換気と第3種換気についてです。渡辺建築工房では、昔から慣れ親しんだ第3種換気システムをもっぱら採用してきました。第3種換気システムとは、住宅内の広範囲な部分から常時排気する、それに引っ張られて居室の給気口から外気が流入する、というものです。

換気の主な目的は、室内で汚れた空気を排気することと、新鮮な空気を供給するという2つの機能があります。そのうち、室内で汚れた空気を、汚れた場所からもれなく排気することに主眼を置いたのが第3種換気の特徴でもあります。たとえば、トイレの天井にも排気口があります。トイレ室内の空気は、ドアの隙間から廊下などの外へ漏れることなく、逆に廊下からトイレ内へ一方方向の空気の流れを維持しながら排気するという訳です。あくまで、人間が常時過ごすことになる居室へは、フィルターのみを通してダイレクトに外気が入るというシステムです。同様に、トイレ以外にも湿気や臭い等を発生するキッチンや浴室などからも常時排気され、しかも居室から一方舗通行の流れを維持する訳です。この換気システムの快適性に与える効果は素晴らしく、空気のよどみがありませんからら、不快な臭いがこもったりすることが激減します。また、例えば湿気がこもりやすい季節においても、脱衣室などがわりと快適な状態を維持するなど、『臭いや湿気の発生源からダイレクトに常時排気』している方式のメリットが素晴らしいという事を経験から知っているのです。

それに対して第1種換気というのは、フィルター及びダクトを介して居室に空気を供給するという事に主眼を置いていて、排気は廊下などどこか一箇所を決めて、そこからのみ排気するという仕組みです。最大のメリットは『暖房効率が良い』という事です。従来は、暖房効率が良いからと言って、電気代をたくさん使って換気するのでは意味がないという事も言われてきましたが、今はそれも随分と改善されてきたようですね。あとは、フィルターを定期的にしっかりと交換するというメンテをおろそかにするとたちまち 換気能力が激減しますから、換気していない家と同じになってしまうという事を理解することが大切になりますね。

しかし、例えばトイレはトイレ、浴室は浴室でそれぞれ別途、必ず別器具で排気しなければなりませんし、そういうところは個別換気を運転しているとき以外は、空気が動きませんし、逆流もし得る状態であるという事で、換気の2大機能のうちの排気に関しては、効果が部分的であるということになってしまいます。特に、全熱交換タイプですと、熱だけ交換するのではなく、汚れた空気の臭いや湿気までも一緒に『新鮮な空気として供給』する危険があるのです。

ところで、大変熱心な勉強家であられるお客様からのリクエストの中に『24時間換気システムは第一種の熱交換タイプで』と、ここまでなら高性能住宅に熱心な方ならあり得そうな要望かなとも思ったのですが、『それも顕熱タイプで』というのですから私はとても感心してしまいました。顕熱タイプというのは、全熱交換タイプと違って給気は100%が外気ですし、室内の排気から熱だけを取得しますから臭いや湿気、それに汚れまでも再給気する危険がありません。

では、第1種熱交換タイプでは、排気は各階で1箇所しかできないのでしょうか?それについて日本の家電メーカーの大御所ともいえるP社の技術部門に直接電話をして聞いてみました。グループ会社が住宅ハウスメーカーでもある大会社ですから、最先端の機能と情報が得られると期待したのですが・・・。

結果的には、排気はあくまで1カ所しか設定できない、どうしてもという要望があれば複数個所の配管設計をしますが、あくまで1カ所が原則です、と・・・。つまり、仮に複数個所に排気を配管しても、それぞれに計画的に排気量を分配できるような機器の設定にはなっていない訳ですね。24時間換気が義務化する前から第3種換気を必須のものとして利用してきた私としては、まだまだこんなレベルなのかな、と思ったのでした。

そうなれば、ドイツのスティーベル社製などの、海外品に頼るしかないのかもしれませんね。スティーベル社の熱交換器は、排気を複数個所に持っていく設定になっていますし、もちろん顕熱型です。あとは、排気が個別に排気量設定できる設計になっているのかどうかと、最大の問題はイニシャルコストと、将来交換するときの機器交換時コストでしょう。この辺はこれから調べてみたいと思っています。

アルデ第3種換気システム

長々と書いてきましたが、しかし現時点では、

 ・住宅内にまんべんなく個別の排気を計画できる(連続換気住宅の最大の醍醐味)
 ・給気フィルターは、仮にメンテを忘れてもそれなりに排気はしっかり行っているし、そもそもダクトを介さないから高性能フィルターである必要もない。また用途に応じて高性能フィルターも選択可能
 ・給気はダクトを介さないので長期に安心
 ・将来の機器交換をも踏まえたコストが少ない

などの理由から『万人に安心してお奨め』できるのは、やはり第3種換気ではないだろうかという結論になるのでした。