栃木県における住宅の省エネルギー基準(断熱基準)の地域区分マップ
令和元年11月16日から新しく適用された住宅における省エネルギー基準について、栃木県内の詳しい地域区分は以下の通りです。全国を最寒冷地(1地域)から最暖地(8地域)まで8つに地域分けされたのですが、栃木県内だけで、なんと2地域から6地域まで5つもの断熱地域が存在しています。場所により寒暖の差がいかに大きいかということですね。
2地域:日光市(旧栗山村)稚内市、旭川市、札幌市などと同等
3地域:日光市(旧足尾町)函館市、青森市、盛岡市などと同等
4地域:日光市(旧今市市、旧日光市、旧藤原町)、那須塩原市(旧黒磯市)、塩谷町、那須町 秋田市、山形市、会津若松市などと同等
5地域:宇都宮市、栃木市、鹿沼市、小山市、真岡市、大田原市、矢板市、さくら市、那須烏山市、下野市、上三川町、益子町、茂木町、市貝町、芳賀町、壬生町、野木町、高根沢町、那珂川町 水戸市、甲府市、富山市などと同等
6地域:足利市、佐野市 東京23区、京都市、大分市などと同等
ここで最も注意すべきことは、同じ断熱地域であっても実際には気象条件がまったく異なるということです。例えば日光市内の同じ4地域内であっても、「今市」と「奥日光」では、同じUa値の同じ建物を新築して比較した場合、室内環境性能が全く違ってしまう事は想像に難くないでしょう。
ところで、業界内で広く知れ渡っている住環境の指標として、民間機関である「 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が提案している、Ua値から判断するHeat20 – G1~G3というクラス分けがあります。
Ua値から判断できるもうひとつの指標、2022年から国土交通省から追加・定義付けされた断熱等級5~7ですが、業界内では広く流布されていることで注意を要する事があります。Heat20のランクと、断熱等級の比較指標についてです。たとえば「断熱等級6はHeat20-G2レベル相当」という記述があらゆるWebサイトに散見さているのですが、しかしたとえば、5地域で断熱等級6の外皮基準のUa値は、実際にはHeat20-G2が提示しているUa値には程遠く、ほぼG1レベルに近い数値となっているのです。
しかしだからといって単純に断熱等級は当てにならないかどうかは建築地によりますので、具体的には計算から確認・判断できるサイトがあります。「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のサイトの中で、「住宅シナリオと外皮性能基準」という項目の「Ua値の地域補正」というページに行き、設計から求められたUa値と、実際の建設地に気象条件が近いと思われる地点を選んで入力しさえすれば、求める「Gいくつ」をどの程度、満たせているかどうかの確認ができるようになっているのです。
このサイトで栃木県内の「地域区分5」の中のいくつかの地点をシミュレーションしてみると、G2指定のUa値は、気象的にどちらかといえば不利な地域においても適用できるよう、厳しめの数字を当てはめたようだということが分かってきます。そもそもの断熱地域区分自体が、あまり細かく振り分けると複雑になることや、混乱をきたさないよう自治体単位で設定したこともあっての判断基準ですから、具体的に建設地域に沿った確認が必要ですね。
以上のようにUa値からある程度の確認と判断はできるものの、住環境性能に大きな影響のある、日射による暖房効果や計画換気などは、実はUa値の算出には全く考慮されません。たとえば南の窓を小さくして冬の日射を遮ると、Ua値は良くなりますが、暖房費は逆にかさんで不利になります。そういう意味で、日射の取得や換気をも計算に組み込んだ基準であるQ値(新住協のQ-PEXというソフトなどで算出できます)も含めて総合的に住環境を判断する必要があるのです。
高い省エネ性能とよりよい住環境の実現に特に熱心なプロは、今ではQ-PEXなどの省エネ計算ソフトを使いこなして、Ua値だけにとらわれない住環境性能を追求しています。また設計が満足にできても、気密性能その他の現場施工性能には、経験にもとづくノウハウがあるということも現実として知ることが必要です。(2023年1月18日更新)