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2009-04-13

古民家再生事例の視察(福島県郡山市)

昨日は、古民家の断熱改修・再生リフォームの実例を視察するため、福島県郡山市まで行って来ました。

壊すにはもったいない日本の文化遺産である古民家を、満足して暮らせるように快適な環境に再生して残す、というコンセプトのモデルハウスです。

私も以前から手がけている種類のプロジェクトです。

こういう古民家というのは、都会に住んでいる人にはノスタルジックで素敵な対象かもしれませんが、住んでいる人には、とりわけ若者には

・寒い
・暗い
・不便

の3拍子が揃った厄介者として、沢山の建物が壊されてきました。
また、今も全国で、沢山の古民家が壊され続けているのです。

しかし、建築学的に見ても日本の古民家は世界に誇れる偉大な存在である事は間違いないですし、何よりも、もったいないですよね。

先の、私が手掛けた例も、私が既存住宅を快適な高断熱高気密住宅に再生する仕事を知っていた方が、お父様が建てられた建物にとても愛着を持っておられ、相談していただいたお陰で、無事に長く存続する事になったわけです。

こういう仕事をしている同業者が近くに殆どいません。
もちろん、古民家再生を行う業者はいますが、

見た目や構造は綺麗に再生しても、寒くて住みにくいという快適性が全く解決してません。もちろん、再生前よりは「マシ」かも知れませんが、高断熱高気密住宅を手がけている立場から言えば、体積が膨大な分だけ全くもって寒いままです。

古民家再生事例

上の写真は、居間の広大な吹抜け。

知っている人は、こんな家は寒いし暖房も不可能、と考える筈ですよね。
こういう空間を作っていながら、寒くないといしたら、想像できますか?

そういう快適な住宅に変身させる仕事をしているわけなんです。
そんな事ができるの?というのが一般の方々の素直な感想でしょうね。

しかし、それを我々建築のプロが実現できなくて、
体積が広大なのだから寒いのは当たり前で片付けたとして、
そういう生活を所有者に強いながら「文化財保護」を求めるのは、
無責任だと思うんです。そうは思いませんか?

そうだとしたら、公園の展示品として、数少なく残すしか方法はないと思うんです。

古民家再生事例

2階の部屋には、天井が貼ってありません。
屋根が見えていて、一体感があります。

古民家再生事例

南側の廊下越しに見ると、こんな感じ。
プライバシーの問題を気にするという人も、いるかもしれませんが、
それはそれとして意匠的に見ても、また、その場に居ても、
とても現代の新築住宅では得られない魅力的な空間である事は、
誰もが認めることでしょう。

こういう、総2階作りの古民家は、
栃木県の地方農家住宅では殆ど見られませんので、
とても面白いし羨ましいと思いました。

断熱技術や構造補強方法などについてスライドで説明を受けたところ、
私には特に目新しい、というものはありませんでしたが、
同様の事を手がけていらっしゃる実例として、とても参考になりましたし、心強く思ったのでした。