3帖の書斎(前編)
一般的に書斎というと、寝室の一角にでもあるように漠然とイメージするのではないでしょうか?
しかし実際に書斎を必用とする人が、どのような時間に利用したいのか、あるいは、そこで何をしたいのか、という事をよく考えて、どこにあるのが最も便利なのかをしっかり考えたいものですね。
写真の書斎は、主寝室にあるのでもなければ、その近くにあるのでもありません。リビングに対面した台所の横にあって、リビングからも、また台所からもすぐいける場所にあるのです。
主として書斎を利用する御主人は、職場での残業を程々にに切り上げて、自宅で仕事をしたいという希望がありました。もしもその書斎が2階にあったとしたらどうでしょうか?奥様が寝るにはまだまだ早いという時間であった場合、御主人は2階で孤立してしまうのではないでしょうか?
もちろん、そういう環境でなければならないという人もあるでしょうが、こちらの御主人はそうではありませんでした。家族の気配を近くで感じながら仕事をしたいという気持ちがあったと思います。
しかしこの書斎は、ほんのちょっと奥まっていて、リビングからはダイレクトには見えません。見えないけれどドアもないので音はよく聞こえます。この付かず離れずがとても絶妙なんですよ。
仮に仕事が深夜に及んで家族が寝静まってしまった場合、休憩がてらにコーヒーブレイク、なんていうときも数歩で台所ですから本当に便利なのです。
便利、便利というふうに書いてはみましたが、本当は単に便利な事だけを求めて住宅の計画はしていません。家族の位置や会話などを想像したりしながら、豊かな心地で気持ちよく生活が出来るようにと、そんな事を願いながら空間設計を練っているんですよ。
さて今度は、たった3帖という広さに、どれだけの機能が盛り込まれたかについてですが、それは明後日のお楽しみにしたいと思います。(後編に続く)