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2012-09-01

栃木県歴史的建築保全・活用専門家育成講習会

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

堅苦しい名前の研修会ですが、読んで字のごとく、丸一日かけての勉強会でした。午前中は、田母沢御用邸跡の研修室で講義を聴き、その後は実際に建物を見ながらの研修でした。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

元栃木県の建築課長であり、保存再生に携わった海老原忠夫さんが講師。保存再生から文化財指定を受けるまでの苦労話やら、裏話的なエピソードなど、大変興味深い話が盛り沢山。保存価値のある建物を発掘して生かすまでの過程をありありと再現してくれました。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

旧田母沢御用邸の建物は、日本で現存する宮内庁所有もしくは所有した建物の中では唯一、明治・大正・昭和の三代の天皇が実用的に使った歴史的な建物でもあるとのこと。さすがに日本のロイヤルファミリーのための建物。一流の材料を使って最高の作りをしているのだから、何度でも見て勉強できる建物ですね。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

庭も素晴らしい。庭だけなら見学料を払わなくても自由に見ることが出来る。季節が変わるごとに違った魅力が堪能できるはずです。こに庭だけでも、何度でも散策に来る価値はあります。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

午後は東照宮。午前中の建物といい、時の日本最高実力者の建物であるから、お金のかけ方も半端ではないし、同等レベルの仕事に実際に携わる機会は、そうそうない。しかし、そういう最高レベルの本物を何度も見ることが最高の勉強になると思うのでした。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

解説をしてくれたのは、40年以上にわたり東照宮の保存活動に携わってこられた、元日光社寺文化保存会の技師・岡部信夫さん。日光山内の社寺建築の隅々まで知り尽くした重鎮。そういう方ならではのオリジナルな知見が盛り沢山の講習でした。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

建物も、一般客が立ち入りできないような場所に入れていただいてお話を伺ったり、特設の保存作業所へ案内してもらい、実際に保存作業をしている職人さんの話も聞くことができました。江戸時代中期に描かれた建物の図面を見ることが出来たのは驚きでした。それも、東照宮に伝わってきたのではなく、市内のとある旧家にあったものだとか、どこにも書かれていないエピソードでしたね。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

建物の構造など物理的な側面の話はもちろんですが、それだけではありません。切妻の建物は妻側こそが見るべきところである、というような芸術的な知見を披歴していただいたり、レベルの高いエキスが詰まったお話を伺うことができました。

栃木県歴史的建築保全・活用専門家(ヘリテージマネージャー)育成講習会

というようなアカデミックな研修会。しかし見学中にもついつい、こういうところに目がいってしまいます。これは江戸時代の日本人が考えていた像の姿。

東照宮も、丸一日かけてゆっくり見られたら沢山の面白い発見が出来そうです。

皇室の建物と徳川幕府の建物と、近世から近代にかけての最高峰の建物が、日光市内には現存するという恵まれた環境だと改めて認識したのでした。これは何度でも見に行かなければもったいないですね。

ドイツの建築家であるブルーノ・タウトは『桂と日光』を比較論評していましたが、桂まではある意味及ばないかもしれませんが『田母沢と東照』という比較で考えても面白いかもしれませんよね。